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ダレがナンと言っても(^^)
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とは言え、今までの荒んだ生活の中では何も書けはしないだろう。
何か小説の題材になるものを探すために、いや、それよりも、自分自身を立て直すために取材旅行にでも出かけようと思った。
普通なら書きたい内容に沿ったところへ行くものだが、どこでも良かった。
長いブランクの後だったから、とにかく場所を先に決めて、そこで書けるものを書こうと思ったのだ。幸い、出世払いということで、友人から幾らかの援助もあった。

最初に思いついたのが湖だった。
木々の葉が風に揺れる音、水際にかすかに寄せる湖水、鳥のさえずり、月を映す湖面・・・・・。
こんな風景の中に身を置けば、自分なりに納得するものが書けるだろう。

何故あの湖に行こうと決めたのか、今でも分からない。
写真やガイドブックで見たことも、ましてや行ったことなど無く、何気なく地図を見ていて気になっただけの場所だが、実際に行ってみると自分の抱いていたイメージにピッタリだった。
静かで豊かな水を湛え、緑深い森の姿を映す湖は例えようもなく美しく、森に住む動物や鳥たちの声を連れた風が湖面をわずかに波打たせている。

湖畔に建つ小さなホテルに半月ほど滞在するつもりで、最低限の生活用品とパソコン、それに本を何冊か持って来ただけだ。
少し足を伸ばせば小さな街がある。不自由はしないだろう。
チェックインを済ませ案内された部屋は、湖に面した2階の部屋だった。

「このホテルで一番見晴らしのいい部屋ですよ。時々、画家の方がお泊りになられるんです。」

ベルボーイの言ったとおり、ベランダからは湖と森のほぼ全体が見渡せた。
確かに私が画家だったら、この風景を良い題材にするに違いない。

まだシーズンには早いのか、私の他に泊り客はほとんど居ないようだ。お陰でよい部屋に泊まることができたが、建物の古さと人気の無さのせいか部屋の空気がやけに冷え冷えとしている。
部屋に戻って仕事の準備をしようとパソコンを取り出し、電源を入れた。

「!?」

いつもなら気にもしない画面に何かが映った気がした。
一瞬の出来事。光の加減で自分の影でも映り込んだのだろう。
よくあることだ。私は自分にそう言い聞かせた。

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